すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

術後の痛みについて<その2>

術後の痛みについて。緩和ケアクリニックで説明を受け、理解し、まずは現状 ベストな対処方法を知ったわたくしは、ひとつ安心を手に入れました。

その翌日いつもの鍼灸院で、若先生にこのことを報告しました。そして、鎮痛剤を長期にわたって使い続ける不安と、薬を使わず自然にまかせて痛みに耐えながら(QOL低めで)日々を生きていくことを天秤にかけていることを話し、やっぱり薬は使いたくないけれど使うしかないのかなあという迷いも聞いてもらいました。鍼灸の若先生は痛みを和らげるツボにお灸をすえながら、お腹まわりを触診し、「確かに左側だけ筋肉が盛り上がってます。外腹斜筋です」とおっしゃるのです。

外腹斜筋とは肋骨で守られていない腹部を守る筋肉、おそらく術後の痛みを受けて勝手に発達してしまったのではないかと先生は言いました。わたしのカラダは無意識のうちに痛むお腹を守るため、左脇腹に鎧をつくってくれたんだ。カラダってけなげだ。

筋トレの人たちは鍛えたい場所を“意識”しながらトレーニングするといいます。そうすることで理想の筋肉をつくっていくのだけれど、痛みという意識もまた、筋肉を変えていくことがあるんだなと思いました。意識の力ってすごい。

それでいえば、進撃の巨人の「鎧の巨人(ライナー)」って全身の表面が鎧に覆われている。鎧のような筋肉。つまり鎧の巨人は、全身の内側に強く激しい痛みがあるため、体表が鎧のように硬質化したという設定はどうよ?なんて思ったり。いや違う、ライナーの場合は肉体の痛みではなくこころの痛みだな。全身を満たす、もの凄いこころの痛み。あんなに全身が硬質化するなんて、それは想像を絶する痛みだよねライナー・・・などと、話を大きくしてみる。それほどにカラダはすごい。それほどに、こころもすごい。漫画ネタだけど。しかもわたしの勝手なヨタ話だけど。

で、鍼灸の先生いわく。神経の誤作動ルートについては、手術後に限らず発現することがあるとのこと。長期的で慢性的な肩こりや腰痛を訴える患者さんの中に、実は原因が完治している人がいるそうです。それは痛みやコリに苦しんだ過去の記憶が、脳への強力な神経伝達回路をつくりあげてしまい、常時開放状態にしてしまっているからだそう。だからいつまでたっても痛みやコリを感じ続け、一生鍼灸や整体に通い続ける。なるほど。

おっ?待てよ。いいこと考えた!それってもしかしたらイメージの力でなんとかなるんじゃない?と、お灸の熱を感じながら活路を見いだすわたし。このアイデアは、鎮痛剤を服用する以外にできることとして、「痛みが消えることを“願い”ながら生きていく」という緩和ケア医師の言葉とも繋がる。思いによって、気合いによって、イメージの力で、痛みの伝達回路を消滅あるいは無効化することができるんじゃないか?「この先、通行止め」「工事中」とカラダに言い聞かせる。

いや待て、もっといい方法を考えた。道路工事はたいへんそうなので、てっとりばやく交通ルールを変えるというのはどうか。「痛い」という意識が誤った道をつくってしまったなら、逆にその道を利用してしまうんだ。そこに「痛い」ではなく「気持ちええ!」という意識を流せばよいのではないか。間違い回路に偽情報を流すという、頭脳バトル的な展開が熱いではないか。マンガっぽいではないか。おもしろそうなのでやってみようと思います。脳で脳をだますんだ。やだかっこいい。

そういえば手術直後のICUで、あまりの痛さに耐えかね、「痛み」を「うまみ」に言い換えることで苦痛を幸福感に変える実験をやったことを思い出しました。アレは失敗だった。痛みが襲ってくるたび、口に出して「あーうまい!超うますぎ!」とか言うたびに、めちゃめちゃ笑えてしまい、傷口に響いて余計にうまみ(痛み)が増すという悲惨なものでした。アホでした。

おそらく、「ああ気持ちいいなぁ〜」程度なら爆笑はしない。ほのぼのマイルド。ただしこれが上手くいくと、いつわりの気持ちよさを覚えてしまった伝達回路が、気持ちよさを求めてますます太く強くなるかもしれないという諸刃の剣。

 

などと書きながら、自分がどこまで本気なのかよくわからなくなってきました。まぁ、本当のところはやけくそ気味のネタなんだけど。ああこれが最初から、がんも痛みも全部ネタだったらよかったのにネ。でも楽しいなあヨタ話って。これ思考実験だから、って言うとかっこいい感じ。