すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

ワトソン先生のように

断食してからちょっと弱ってたのか、パソコンの電源を入れるのが億劫で。

だけど少しずつ元気になって、変わらぬ日々を過ごしておるのです。

 

おととい鍼灸院に行ったら、水曜担当の美人若先生はお休み。院長が臨時担当。

わたしがその日最後の外来だったらしく、

施術後になんと治療室の壁がどーんとフルオープン。魔法かっ。

色あせたカーテンとベッド、電子灸の機械や経絡図や白いツボ人形が並ぶ

古びた治療室の隣のお部屋は、緑豊かなお庭に面した広々としたリビングで

素晴らしいソファやピアノ、大理石のテーブル、クラシカルなカップボード、

唐三彩や工芸品、美しい調度品の数々が並ぶシックなインテリア。

 

「お茶を飲んでいってね(にっこり)」

 白衣を脱いだ院長先生は、虹色のシルクのワンピース。きれい。

お湯を注いで手渡されたワイングラスの中で、

中国茶のボールがゆっくり開いて菊の花のように大きく咲いていく。夢みたい。

 

治療室の隣がこんな魔法部屋になっていたなんて驚きましたよ、素敵ですね。

「ずっと夢だったのよ。シャーロックホームズのワトソン先生のように、

自宅で開業するのが。イギリスみたいなお部屋で、

患者さんが来れば白衣を羽織って治療するのが夢だったの。

わたしは夢が叶ったのよ。だからあなたもね。

治ったら、いつか一緒に中国に行きましょうね」

 

先生の優しさとロマンに胸いっぱい。

先生のお母さんは中国で女優だったけど若くして亡くなった。

なるほど、道理で先生は美人。若先生は超美人。

先生のおじいさんは中国で屈指の劇団の座長、

今の日本でいうところの猿之助みたいな存在感のある芸術家だったけど、

文化大革命で放逐されてしまった。

若き日の先生は中国で医術を学んだとき、いろんな道がある中で

経絡こそが将来の人を救うと直感した。

そんな興味深いお話を聞くうちに、とっても元気が出てきました。

 

「あなたは泣き言を言わない。

あそこが痛い、ここが辛い、人生うまくいかない

そんな患者さんばかり(そりゃそうだよー。だから鍼灸に行くのに)の中で、

あなたは辛いと言わずに明るくしていて、

自分で勉強し、自力でできることをがんばっているよ。

応援する。共にがんばろうね。」

 

そのようなお言葉をいただき、もう感謝感激。

脇腹が痛い、下痢する、吐き気する、

なんていつも伝えていたつもりだけど。

嬉しい。

実際、わたしは鍼灸が絶対に治療に役立っていると思う。

 

サイモントン療法で、瞑想時には

「あなたは今世界で一番心地よいと思う場所にいる、とイメージして」的な

プロセスを踏むのですが、

ハワイもヒマラヤも白神山地プロヴァンストスカーナ

行ったことない私がいつもイメージするのは

この鍼灸院のひなびたベッドの上でした。まじで。

 

それが今や、扉の向こうに英国の静かな空間と

先生の微笑みがあるというひなびたベッドに進化したのです。