すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

事務所仕舞いヽ(`Д´)ノもう来ねえよ!ウワァァン

抗がん剤との日々、「第1回チキチキTS-1ですい臓がん再発予防大会〜!」は深刻な副作用で途中離脱したけれど、やり直しの「TS-1大会(略)」はなんとか4週間を乗り切り、さらに2週間の休薬期間も今日でおしまいとなりました。明日から第2回のスタートです。今回は3週目あたりから下痢や吐き気などの副作用が出始め、休薬直後にピークが来ました。毒は蓄積していき、服用期間から後ろにズレてタイムラグで発生する副作用があるようです。1日3〜4回の下痢と腹痛、唇を覆いつくすような口内炎、動悸息切れ。それが落ち着く頃に次のクールが始まります。

休薬期間中くらいは自分がすい臓がんであることを忘れたいと思い、努めて友だちに会ったり社寺仏閣に出かけたり、意味なく近所を徘徊して疲れたり、近所の美術館や国立自然博物館の年間パスポートも入手して私なりのリア充気分を高めてみたりしていました。

そんな中、広尾に借りていた事務所(仕事場)をいよいよ仕舞う時が来ました。7月1日から新しい店子さんがやってくるので6月中に整理を、と。新しく入居するのはプロダクトデザインと販売を行う2名だけの、小さな新しい会社さん。ここが出発の場所となる。だからデスクや棚、私とアシスタントさんが使っていたiMac(去年の秋に新型が出てすぐに入手したもの。惜しいわぁー)2台をそのままお譲りすることにしました。

処分したのは今までため込んだ資料や書類、そして作品。わたしは広告制作者としては古い世代で、今みたいにデジタル広告やコンテンツじゃなく、紙の広告やSPツールがメインでCMやPVも時々やっていたので、事務所にはポスターやパンフレットや掲載紙などの刷り上がり見本に、コンテやラフや企画書が山のようにあって。どれもわたしにとっては生きてきた証。それぞれに思い出深いものだし、一緒に組んだデザイナーさんやカメラマンさんが優秀だった作品は今みてもハイクオリティで凄く美しい。特に化粧品とかゲームソフトとかの広告は抜群。だけどわたしにとっての「作品」は、わたし以外の人にはただの紙ゴミでしかない。切ない。復帰をお待ちしています、また一緒に仕事しましょう。と言ってくださった奇特なクライアントさまや仕事仲間たちの顔が浮かぶ。

往生際悪く、モタモタと紙を束ねる。あの世に持っていけるわけでなし。仕事を辞めるときは誰もがこうして自分の生きてきた証を捨てていくものなのかな。

 

さよなら広尾。ここでは10年くらい仕事していたね。素敵な街でした。窓から見える東京タワー。夜明けの空にラッパを吹くモルモン教の塔の天使。高級車だらけの路上駐車。量が少ないのに値段が高いランチ。とうとう最後まで場違いなわたしで本当にすいませんでした。そして、事務所で育てていた植物3鉢を自宅に持ち帰りました。

 

というわけで明日から第2回チキチキTS—1大会、平常心にてがんばりますぞー。