すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

病院の小ネタ

痛みに耐えてがんばったので、順調に回復してきました。来週あたりそろそろ退院できそうです。

お忙しい中、お見舞いに来てくださった方々に。うれしかった。ほんとにありがとう。窓辺がお花やさんみたいになって可愛らしすぎ。

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で、入院中のおもしろ話を書きたいと思っていた。けれど病棟は基本的に患者を治すところで、余計なものや人が存在せず、つっこみどころもなく、わたしには際だったおもしろポイントを見つけることができませんでした。なんか敗北感。

 

一昨年、父が入院してた鞍馬口医療センターのがん病棟ではこんなネタがありました。けっこう気に入っている思い出です。

デイルームのブックスタンドに「精一杯、病と闘った先輩たちが残していってくださった本です。整理整頓を心がけ、大切に読みましょう。」という張り紙があってなんだかしみじみするのだけど、置いてある本が全部「ミナミの帝王」「代紋 take2」「静かなるドン」とか一昔前の極道まんがばっかし(もちろんどれも名作ですけど)。あと、いつ発行されたかわからないほどボロボロんなった少年ジャンプが山積み。毎週買い続けた長期入院の患者さんがいたのかなぁ、なんて思わせる発行ナンバーの連続ぶり。この病棟で先輩方が繰り広げたいろんな闘いの痕跡に深く思いをはせたことだった。わたしはこういうことを見つけては、しばし考え、しみじみ味わうのが好きなのかもしれません。

 

しかし今回の入院ではなかなか味わいを見つけられない。くやしいけど、自分の感性の衰えやIQの下落を認めざるを得ない。

やっぱり、がんの恐怖や手術の痛みなどの強度なストレスは脳にダメージを与え、当人を頭わるい人に変えちゃうんじゃないか?これ、わたしの仮説なんですけど、一種の自己防衛本能で、パニックをおさえるために頭が自動的に処理落ちする感じ。7年前の東日本大震災のときも震災後1ヶ月くらい、明らかに私も周りのみんなも頭悪くなっていた。あれもきっとそうだと思う。

 

とまあ、そんな中でもまあまあ良かったネタを書いておきます。手術時、全身麻酔をしてもらうとき手術室に好きな音楽が流せるというサービスです。手術の前日に、有線放送のメニューから好きなチャンネルを選ぶだけなんだけど、邦楽・洋楽から民謡、最新チャート、懐メロ、クラシックまでいろんなジャンルがある。そのリストの中に、わたしは見つけてしまった。「季節音楽・ショッパーズ」カテゴリ。来たー!そして、そこにあった最強チャンネル「蛍の光」!!

 

♩真っ白い宇宙船のような手術室、わたしは赤子のように横たわっていた。背中から麻酔を打たれながら、遠ざかる意識の中で、私の耳は遠くかすかにあの旋律をとらえていた。そしてゆっくりと瞳を閉じ、闇へと落ちていく・・・私を・・導く・・・メロディー・・・・・蛍・・の・・・光・・・大爆笑。縁起悪過ぎ。

 

さらに上級編「閉店挨拶(蛍の光)」もありました。パチンコやさんのラストのあれ。ああ切ない。こんなん絶対手術室に流してはいけない。

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聞いてみたところ、過去この病院で蛍の光を選んだ患者はゼロとのこと。そりゃそうだ。「蛍の光」の3文字だけでお別れや終わりのさみしい連想があるから、この欄はもう黒塗りしておいたほうがいいと思います。

ただ過去には、手術に立ち向かう勇気を出すため「ロッキーのテーマ」を選んだ人、帝王切開で「ハッピーバースデー」を選んだ人がいたらしいです。そういうのは素敵ね。

 

わたしは曲よりも人の話し声が聞こえていたほうがさみしくないかなと思い、一瞬「来店挨拶」を選びそうになりました。景気もよさそう。が、そこは人としてグッとこらえて、話し手の気配とリアルタイム感を得たくてFM放送にしました。いつも事務所で聞いているFM東京が良かったんだけど、NHKしか選べなかった。

もちろん手術室ではちゃんとリクエストどおりかけてくれました。たまたま番組上、暗くて不穏で大げさなワーグナーかなんかの序曲がかかっていて、しくった、今は朝のクラシックの時間・・・・と思うまもなく意識を失ったのでした。