すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

納棺スクールを見学した件

水曜日、梅雨の晴れ間のプチ遠足にまいりました。春から受講していた死を通じて生を学ぶという社会人講座の、教授と受講生の皆さんとご一緒に。行き先は、納棺師スクール。おくりびとの学校です。

親切丁寧にカリキュラムの一端を見せてくださり、また法律から倫理からメイクまで、納棺についての詳しい背景までも。さらに、著名な納棺士の先生との質疑応答の場も用意してくださいました。いま日本には2000名のプロの納棺師が存在し、そのうち高い技術や人間性を持つ「本物」は350名くらいだそうです。

 納棺の儀式を映像で見せてくれました。父の葬儀の際に見たものや、映画「おくりびと」で見たものと同様に、とても美しいパフォーマンスです。学長のお父様、やはり納棺師だった方が、能や舞の所作をとりいれて完成させたそう。また、それまでは白衣着用でおこなわれていた納棺を、シャツにネクタイ、黒いベストという服装に変えたと。死者への敬意をあらわすために。以降はこのバーテンさんみたいな洋装が、美しい所作による死装束へのお着替えとともに、日本全国の納棺のデフォルトになったらしい。お葬式を準備するための「作業」だった納棺が、死者を敬う「儀式」になったんだなぁと思いました。先代さまは、納棺界(界?)の世阿弥やね。文化は成熟する前のどこかでブレイクスルーがある。

 

で、わたしが感じたこと。華道や茶道、日本舞踊などに通じる様式美の世界ではあるけれど、扱うものはご遺体であり、お客さまはご遺族である。納棺師のお仕事がスキなく美しく洗練されるほど、所作が熟練した完璧なものとなるほど、それはマニュアルどおりに動くロボットのようにも見えかねないのではないか。そこに心が見えるだろうか。愛する人を亡くして傷ついているご遺族ほど、繊細に感じ取るんじゃないか。と思うと、なんとシビアな、手抜きどころか決して心を抜くことができない、人間性を深く問われる職業なのではないかと思いました。(本当はどんなシゴトもそうだけどねー)それが出来る人がきっと「本物」。

このあたり、生徒さんにどんな教育をおこなっていくのか、詳しく聞いてみたかったけど時間切れ。納棺士の先生にはシゴトを通じてどんな死生観が育まれたのか、それはどういうものか、詳しく聞いてみたかったな。

 

他、棺桶に入ってみたり、付属の超モダンなビル寺の全自動お墓参り(勝手に命名)を見学したりして、たいへん刺激される遠足となりました。棺桶体験は、わたしが入ると洒落にならんな、と思いつつ好奇心に負けた。生きたまま入ると逆に長生きします、と言われて、そいつはありがたいなよっこらしょっと入棺。中に横たわり、顔の上の観音扉が閉まると、意外なことになんだか落ち着く安らぎの世界。こころが静まり、感覚がふわっとする。アレ?この感覚、何かに似ていると思った。アレや!アルタードステーツや。水タンクに浮かんで、五感を遮断するやつ。フローティングカプセル、アイソレーションタンクともいうアレ。おもしろい。ふぅ・・・棺桶に入ると疲れが取れるぜ。

不謹慎ですいません。ちなみに老教授も嬉しそうに入ってた。