すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

がんゲノム検査(自費代表選手)

再発のお知らせから1ヶ月半。淡々と、じゃなくてアワアワと日々が過ぎていきます。抗がん剤は2回やって、白血球が下がりすぎで中断、そしてまた再開。週1回の通院に加え、先端医療の合わせ技で攻めちゃうぞ系のセカンドオピニオンに行ったり、大枚はたいて自費でがんゲノム検査を依頼してみたりして、なんだか以前より忙しいし金遣いが荒いのです。まず健康保険で3割といえども、いまやっている抗がん剤が1回約5万円とは驚くばかり。高額医療費制度を利用しても出て行くものは出て行くのです。

 

わたしは恵まれています。ずっとフリーランスで働いていたし、幸いにしてお仕事はたくさん頂戴していたし、お金を使う暇もなく、欲しいものもなく、がむしゃらにたくさんたくさん働いて貯まっていたお金、いま吐き出している。

お仕事は楽しいことも多くやりがいもあった反面、無理、無茶、我慢を重ねてきました。こうしてすい臓がんになったことも、今になってお金を湯水のように使ってしまっているのも、すべては自作自演だなぁと。そう思うと静かな気持ちになる。生命保険に入っていたのは本当に良かったし助かった。けれど、もとがケチくさい掛け金だったので、今は焼け石に水の少額請求、それでもありがたいこと。

きっとわたしは種銭が尽きるまで、なんやかんやとやるんだろうなぁと思う。常に何かやっていることで、気が安らぐところがある。お金を垂れ流す痛みが、こころの苦しみをマスキングしてくれることにも気づいています。それができることに感謝すら覚える。

さて、ゲノム検査はまさに博打で、すい臓がんの場合は、他のがん種よりも遺伝子変異がわりと似たり寄ったりな傾向があるから薬が見つかるのはかなり低確率だと言われました。それでもやりますか?はいやります。仮に薬が見つかっても高額自費になるでしょう。それでもやりますか?はいやります。ではここにサインを、、、的なやりとりののち、病院の精算機に吸い込まれていく札束を見送ったのでした。うおおお凄い吸引力や。

過去、自費でゲノム検査を受けたけど外れクジをひいた亡き友のことを思いました。その人は「金ドブだったなぁ」と言ってた。だけどわたしはいまこの時点では「それはわからない」と言える。当りを引く確率が仮に100分の1だとしても、わたしには凄い高確率に思えたから。

昔、パチンコを嗜んでいたときがあります。CR機が普及しだしたあの頃。大当たり確率は約350分の1で、当然負けが多かったけど勝つこともありました。時には、最初の打ち出しの玉で確変大当たりを引くこともありました。お座り一発というやつです。これって、たいへん不謹慎な例えだけど、わたしにはリアルな連想なのでした。パチンコに比べゲノム検査って高確率やん?!と、頭の中で大当たりランプが点滅し、アタッカーが豪快に開く、といった具合に、冗談抜きでそう思ったので博打上等。わたしのアホは治らないが、がんは治せるかもしれない。結果は年末または年始に届きます。

このように自らを茶化しつつ笑いを織り交ぜて、いまここでこんなふうに書くのは、外れを引いたときの予防線、先回りの負け惜しみなのか。金ドブの言い訳なのか、知らんけど。書かずにはおれません。

 

昨日、「がんゲノム検査を自費で受けた人」の立場からお話を聞かせてくださいと言われ、ニュース番組の取材を受けました。金ドブのアホ患者代表かもしれないけど、それもわたしです。インタビューには、なんら装飾も煽りもなく素直に答えさせていただいたけど、パチンコの話はしてないので(笑)ここで補足しました。

 

治療終了、打つ手なしになってやっと保険適用されるのが今のゲノム検査。結果まで2ヶ月待ち。それで適合する薬が見つかるのは10人に1人。その薬を使うにも多くの場合、自費となる。遅いね、高いね、不条理だね、つっこみどころ満載ね。はやく普及してコストも速度もなんもかも改善して、誰もが発病後安心してベストな治療が受けられるようになって欲しいと心から願っています。やがて必ずそんな時代が来るでしょう。