すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

半年

やせがまんばかりで

もう半年過ぎたが

何が変わったか誰を愛したか

頭の中でいま夢がくずれだした

なんとかなれ

 

という、古井戸の歌が頭の中でいま!

 

すい臓にがんが見つかって

検査して入院して手術して退院して、

半年が過ぎました。

 

いろいろあったし、やったし、考えたし、

あっという間だった気もします。

がんに関する本は50冊以上読んだ。

ネットの情報も根堀葉堀した。

いろんな人に会い、お話たくさん聞かせていただいた。

ところが何が変わったかと自問しても

そんなに変わっちゃいないのです。

心の底から変わろう変えたい変わらなくちゃと

必死だったけれど、

がんばればがんばるほど、

それって自発的に意図的にがんばるものなのか?

作為的な変化は、わたしが求める「変化」とは違うんじゃないか?

などとコリクツをこねて自分不信になる。

 

しかし誰を愛したかと振り返ってみると、

誰も彼も愛したと思えます。

目に映り肌を撫でていく日々の情景も、

瞬間の出来事や風にそよぐ猫の毛までも

こころから愛したと思います。

瞬間に神が宿る、一期一会、

行く川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず。

もう二度と出会えないかもしれないという

立ち位置から見るこの世界は、愛すべきものだらけ。

きれいだわ。尊いわ。ほんとうに愛しいわ。

いまもこれからも。

 

猛暑の夏が終わり疲れが出たのか

体調に波があり、お腹の具合が整わない今日このごろ。

長引く術後の痛みの緩和目的で鎮痛剤を始めたら

まったりとして痛みを忘れることができるようになり、

がんのことも忘れて平和な時間も増えるけど、

その代償はおそろしい便秘や、不気味な白日夢を見ることなど。

白日夢はとくに怖い。

謎のモノグラムや茶碗の絵柄(なんでや)、

知らないおじさんの顔とかが見える。

いまは痛みと副作用とまったり感を天秤にかけ、

鎮痛剤を継続するかどうか悩ましい。

 

それから抗がん剤TS-1。

とにかく半年やりましょう、という方針で始めたけれど

いよいよ明日から最終クールが始まります。

と思ったけど、なんとこれが最終ではなかったのでした。

「半年で終わるかこの先も1年続けるか。

自分で決めてください」と先週、主治医が。

 

抗がん剤の副作用と費用がつらくないなら、続けていいです。

半年使用は再発予防のエビデンスがある。

しかし1年2年と続けることで

さらに再発率が下がるというデータはない。

各病院や各医師のレベルで取ったデータを見てきたが

わたしの知る限り半年以上の継続が優位なデータはなかった。」

 

なのに、なぜ「1年間続けるかい?」って聞くの?

 

「TS-1終了から1年後、2年後に再発した患者さんが

『あのとき継続しておけば・・・』と悔やむのを何度か見てきた。

わたしは患者さんに後悔して欲しくない。」

 

それが理由だそうです。

「だから自分で決めなさい、あなたの希望どおりにしますから。」

 

あああああああ。わかる。わかるよ。超わかる。

だけど、なんじゃそれー?だよ。だけど、わかるよ。

その後悔の気持ちが生々しいほどわかるよ。

鎮痛剤、抗がん剤

その他もろもろの「きのこる術」たちもみな同じ。

 

それで、もう少しあと少し考えることにしました。

そんな半年目です。

 

なんとかなれ。