すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

驚愕のえんがちょ物質、抗がん剤

「えんがちょ」は昔、東京に引っ越してきて初めて知った言葉でした。わたしの故郷では「べんしょ」と言っていました。べんしょの語源は、便所なのか糞尿なのか、たぶんそんな感じで。穢れに触れると「べんしょ、べんしょ、鍵きった」と歌いながら指でつくったOリングを切り結界に鍵をかけるのです。主に犬のうんこを踏んだときや、いじめにも使われていました。 

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今日は外来で、病理検査の結果とともに、明日から飲み始めるTS-1という抗がん剤についての説明。病理検査では領域リンパ4カ所への転移があったとのこと。最終的な診断はステージ2bまたは3といったところ。こんなもんはただの数字で、当初のお見立てよりはやや悪いけれどこんなもんです。ここから先は、やるべきことを真っ直ぐにやるし、さらに治療の底上げや副作用の低減のために役立ちそうなことはどんどん実践していく所存でございます。

「TS-1の目的は再発や転移の予防です」「がん細胞が体内に残っている可能性があるなら予防しない手はないです」「最低半年やりましょう」とドクター。が、実際の抗がん剤の効果については明言してくれません。つまりはそういうことなのです。明言できないのです。TS-1が皆に効果があるわけではないって、わたしもう知ってるよ。だけどこのドクターが手術してくださり、がんを切り離し、わたしに生き残るチャンスをくださった。それを無駄にはできないし、今、何よりも再発が怖い。

「服用によってどのような効果、どれくらいの効果が期待出来るのですか?」「TS-1は飲み薬ですが、他の点滴薬よりも効果があるというエビデンスがあります。その違いは、一桁パーセント台の優位性です」

一桁パーセント・・・。明言できるのはここまで。ドクターは事実しか言わない。わずかな情報だけど正しい情報。それに比べ副作用の情報は超充実。医師、薬剤師、ナース、それぞれの立場からの解説があった他、お土産に持たされた小冊子には副作用の種類別に発生率「10人中○人(うち深刻なのは○人)」などの事実が詳細に掲載されていました。大昔、お仕事で「○○国際ドッグショーの入賞犬、10頭中○頭がペディグリーチャムを食べていました」とかいう、新聞の速報広告のコピーを書いたのを思い出して笑えてきました。こういう数字って広告で効くのよね。事実って大事よね。

そもそもこの小冊子、薬の使用効果についてはたいへん曖昧な内容が1見開きのみで、残りのページは全部副作用の説明という、冷静に考えると変なもの。だ、大丈夫なのこれー?と心細くなったところへ、薬の扱いについてのナースさんのお話が「驚きのえんがちょ案件」で絶句してしまいました。

この薬はシートから外したら決して指でつまんではいけません。シートからコップなどに押し出し、手をつけずに飲んでください!服薬中、気分が悪くなって嘔吐しても、決してゲロに触れてはいけません!トイレした後は必ず蓋をして流し、飛沫を防いでください!もし飛沫が便器や周囲についたら、ゲロ同様に決して手で触れないよう掃除し、ふきとった布ごとすぐ袋に入れて密封してください!そう、ノロウィルスに感染したときと同じ!だって。どうやら経皮毒性がもの凄いみたい。

「そんなやばいものを口から飲むんですかあぁぁぁ?」と思わず聞いてしまいました。「はい、飲んでください」だって。小さい子には絶対に触れさせてはいけないし、猫さんを近づけてもいけませんな。べんしょの鍵をしっかり切らねばなりません。もう想像以上の劇物感に武者震いです。そして、これが今やるべきことならばやるよわたし。

 

だけどわたしよ、どうかご無事で!