すべての瞬間を大切にするわ

と、ルイーズは言った。(映画「メッセージ」の一場面から)

あの人が見つけてくれた

膵臓の病気はとても見つかりにくいといいます。どうして見つかったのですか?」と、鍼灸院の超美人な若先生がハリを打ちながら聞いてくるので詳細をお話しました。

 去年の秋頃から全身あちこち不調だったこと。ここは一度に一気にチェックして楽しようと人間ドックを受けたこと。問診票の自由欄に「胃が痛い」と書いたこと。そして超音波検査のことをお話しました。

 

そう、あの時、暗く狭い超音波検査室のベッドで。ひどく無愛想な女性検査技師が無言のまま、だるそうにわたしのお腹にゼリーを伸ばし、胃のあたりをぐりぐりと事務的にスキャンし始めた。もう嫌々仕事してるのがまるわかりで、だからわたしはただ、されるがままに息をひそめていた。超音波のヘッドは正面から脇腹、背中へとすべっていった。そのとき、突然、女性技師が息を呑んだのがわかった。室内のけだるい空気がぴりぴりと緊張していくのがわかった。

女性技士は無言のまま、わたしを何度も裏返し、縦横にし、べったりとゼリーを足しながら超音波のヘッドをぐいぐい押し当て続ける。そしてモニター画面を見る。ピッピッと何かをマーキングしているその横顔の、額が微かに汗ばんでいるのが見えた。

この人は今、わたしの体内に何かを見ている。

この人にはたぶん、怖い物が見えている。

健診機関では、検査中に質問してもその場で答えてはいけないというルールがあるらしい。だからわたしはなにも聞けず、技師もなにも言わず、最後はウエットティッシュでお腹のゼリーを拭き取るように指示するだけでした。それであのときわたしは、「胃だか十二指腸だかに何かできているんだ」と思ったのだけれど、なんのなんの、膵臓だったわけですよ〜。あー怖い怖い。でもあの無愛想な技師さんには心から感謝してるし、いつかお礼を言いに行きたいんですよネ。

 

・・・・と、美人鍼灸師にお話をしました。で、女性技師が息を呑んだくだりのところで、美人鍼灸師の両腕にザーッと鳥肌が立ったのが見えました。恐怖なのか何なのか。わたしの話が臨場感ありすぎだったのか。

「ちょっと、ぞっとしました・・・でも、見つけてもらえて本当によかったですね」

ほんとにそう思いますよ。「胃が痛い」と書いてあるのでちょっくら丁寧に診てやろうかなと思ったのかもしれないし、いつもあんな調子で仕事をしているのかもしれないけど、あの超音波技師は真のプロフェッショナルでした。