コージーコーナー
今朝、同室の2名さまが退院されて空きベッドが3床となり、この部屋はわたしだけになったので、午後からこの部屋を男性用の病室にするとのこと。「お部屋を変えてください」と言われ、隣の病室に移動しました。
わたしの新しいベッドの前にはおばあちゃんが寝ている様子で、カーテンで顔は見えませんが声は聞こえてきます。つき添う人は誰もいなくて、でもおばあちゃんははっきりとした声で、一人でしゃべっていました。
それでわたしは、その独り言に何かとてもこころを動かされてしまい、耳を澄ませメモを取りました。ほどなくナースがやってきて、おばあちゃんを別の部屋へベッドごと移動させていきました。ナースによるとおばあちゃんは、ずっと同じ話をしているそうです。
老いて外科病棟に一人。呆けているのか、術後のせん妄なのかわかりませんが、たぶんお若い頃の素敵な思い出について誰かに話しかけている感じで、ねえ、ねえ、ねえと呼びかけ伝えたい思いがあるように感じました。だから、おこがましいけどわたしがここに書いておく。おばあちゃんの思い。以下メモより。
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わたしはコーヒーが嫌いだったのよ。
でもいつから好きになったのかしらね。
銀座のコージーコーナーにコーヒーを飲みにいったわね。
ね。ね。あおちゃんコーヒー好きでしょう、って。
アイスクリームも
はぁ。はぁ。
お姉ちゃん、コーヒーを一杯ちょうだいよ。ね?ね?
昔ね、コーヒー飲めなかったのよわたし。なぜかしらね。
好きなのコーヒー。
あら、ケーキも。ケーキも頼んだっけ。
はぁ。はぁ。はぁ。・・・・・
コカコーラ?
・・・・・おいし?
このあいだも、コージーコーナーのケーキだったわね。
はぁ。はぁ。ごほっ。
ね、あおちゃん!コージーコーナーのケーキちょうだい!
(看護師がやってきて『○○さん?』と声をかける)
はい。大丈夫よ!
はい、はい。
バスに乗って買ってくるの。銀座。
コージーコーナーのケーキ。
あの。あのね!
ケーキ食べましょうよ!
(看護師『○○さん、お部屋を移りますよ!』と声をかける)
うん?何日間?
(看護師『わからないけど、安心できるお部屋ですよー』)
そう・・・・
あたしさ、あたしね、
コージーコーナーのケーキなんて久しぶりだったの!